田中ひろし法律事務所のBlog
2016年2月26日 金曜日
マスコミが報じる刑事事件の言葉
こんにちは!田中ひろし法律事務所です。
刑法が一部改正されました。注目なのは「一部執行猶予」です。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG1301F_T10C13A6CR0000/
本改正については2013年に公布され、今年の6月に施行されます。
一般的に「懲役2年執行猶予3年」という判決の場合、本来は2年間の懲役刑だけど、すぐに刑務所に入るわけではなく、3年間刑の執行を猶予します、という意味です。
3年間何もなければ、2年間の懲役刑を受けることはありません。
今回の一部執行猶予は、「懲役2年そのうち6か月の執行を3年間猶予」という判決の言い渡しが可能になります。この場合は、すぐに刑務所に入ることになりますが、2年ではなく1年半の懲役刑を受けた後に出所することができます。そして、3年間何もなければ、残りの6か月の刑の執行を猶予します、ということです。
今までは、刑の期間の全部を実刑か、執行猶予かしかなかったのですが、選択肢の幅が広がったことになります。
さて、本日はマスコミで観たり聞いたりする刑事事件の言葉について、説明したいと思っています。
法律家が使う言葉と、マスコミの言葉が異なることがあります。できれば、法律に書かれている言葉でマスコミも報道してほしい、という願いを込めて、言葉の説明をしていきます。
<今回の内容>
1 容疑者?被疑者?
2 告発?告訴?
3 被告人?被告?
1 容疑者?被疑者?
元プロ野球選手の清原氏が覚せい剤保持、使用した可能性があるということで、逮捕されました。詳細は皆さんご存知だと思いますので省きますが、マスコミは逮捕されると「容疑者」という言葉を使います。
http://www.yomiuri.co.jp/national/20160222-OYT1T50184.html
○○という罪に該当する可能性がある、ということで「容疑」という言葉を使っています。ですが、刑事訴訟法では、疑いがあるということで「被疑者」という言葉が使用されています。
両者とも意味は同じですが、マスコミは容疑者という言葉を使い続けています。一般市民が刑事事件の当事者になったり、裁判員になったときに余計な疑問を持つことがないように、マスコミも「被疑者」で統一したほうがいいと思うんですが。
2 告発?告訴?
告発も告訴も刑事訴訟法の言葉です。マスコミ特有の言葉ではありません。
この二つの言葉は、犯罪の事実を捜査機関に申告するということでは共通していますが、主体が異なります。
「告発」は犯人以外の第三者が申告することで、「告訴」は被害者やその親族など法律で定められている告訴権者が申告することです。被害者でなくでも、捜査機関に「あのひと捕まえてください」と申告することができます。もちろんすべて捜査されることはありませんので、むやみに告発しないでくださいね。
最近、小保方晴子氏が兵庫県警に事情聴取されたということがありました。
http://mainichi.jp/articles/20160218/k00/00m/040/103000c
このニュースだと理化学研究所のOBの男性が「告発」したとされています。その犯罪事実は研究所からES細胞を持ち出されたというものです。すなわち犯人は不明だけど、窃盗の犯罪事実があるので捜査してほしいということです。ただしこのOBは直接研究所にかかわりはないので、第三者ということで「告発」ということになります。
3 被告人?被告?
マスコミの方に、声を大にして言いたいのは、「被告人」と「被告」を法律で使われている通りに使用してほしいことです。
「被告人」とは刑事訴訟法で、被疑者が起訴されて裁判にかけられたときに使用されます。
刑事事件では「被告人 VS 検察官」という対立構造です。
そして、「被告」とは民事訴訟法の「原告」の相手方です。民事事件は訴えを起こした方を原告、訴えられた方と被告といいます。「原告 VS 被告」という対立構造です。
「被告」は民事事件ですから、「お金返せ」「土地返せ」「損害賠償を請求します」というもので、罪を犯したわけではありません。裁判に負けたからといって、刑事罰を受けるわけではありません。
しかしながら、マスコミは刑事事件でも「被告人」のことを「被告」と使うので、一般市民の方が混乱して覚えてしまっています。
田中ひろし法律事務所でも、依頼者が民事事件の訴状を受け取って来所されますが、そこには依頼者の名前が被告の欄に書かれており、「自分は悪いことはやっていません」「警察につかまるのでしょうか?」「家族に迷惑がかかる」と相談を受けます。
あまりにもマスコミの「被告」という言葉がインパクトがあるので、自分が刑事罰を受けることになっていると感じておられます。弁護士事務所としては、その誤解を説明することから始めることになり、有料の法律相談だと本題にたどり着けないこともあります。
二文字か三文字かの違いですが、法律に書かれている言葉ですので、マスコミも法律に即して使用してほしいと切に願っています。
刑法が一部改正されました。注目なのは「一部執行猶予」です。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG1301F_T10C13A6CR0000/
本改正については2013年に公布され、今年の6月に施行されます。
一般的に「懲役2年執行猶予3年」という判決の場合、本来は2年間の懲役刑だけど、すぐに刑務所に入るわけではなく、3年間刑の執行を猶予します、という意味です。
3年間何もなければ、2年間の懲役刑を受けることはありません。
今回の一部執行猶予は、「懲役2年そのうち6か月の執行を3年間猶予」という判決の言い渡しが可能になります。この場合は、すぐに刑務所に入ることになりますが、2年ではなく1年半の懲役刑を受けた後に出所することができます。そして、3年間何もなければ、残りの6か月の刑の執行を猶予します、ということです。
今までは、刑の期間の全部を実刑か、執行猶予かしかなかったのですが、選択肢の幅が広がったことになります。
さて、本日はマスコミで観たり聞いたりする刑事事件の言葉について、説明したいと思っています。
法律家が使う言葉と、マスコミの言葉が異なることがあります。できれば、法律に書かれている言葉でマスコミも報道してほしい、という願いを込めて、言葉の説明をしていきます。
<今回の内容>
1 容疑者?被疑者?
2 告発?告訴?
3 被告人?被告?
1 容疑者?被疑者?
元プロ野球選手の清原氏が覚せい剤保持、使用した可能性があるということで、逮捕されました。詳細は皆さんご存知だと思いますので省きますが、マスコミは逮捕されると「容疑者」という言葉を使います。
http://www.yomiuri.co.jp/national/20160222-OYT1T50184.html
○○という罪に該当する可能性がある、ということで「容疑」という言葉を使っています。ですが、刑事訴訟法では、疑いがあるということで「被疑者」という言葉が使用されています。
両者とも意味は同じですが、マスコミは容疑者という言葉を使い続けています。一般市民が刑事事件の当事者になったり、裁判員になったときに余計な疑問を持つことがないように、マスコミも「被疑者」で統一したほうがいいと思うんですが。
2 告発?告訴?
告発も告訴も刑事訴訟法の言葉です。マスコミ特有の言葉ではありません。
この二つの言葉は、犯罪の事実を捜査機関に申告するということでは共通していますが、主体が異なります。
「告発」は犯人以外の第三者が申告することで、「告訴」は被害者やその親族など法律で定められている告訴権者が申告することです。被害者でなくでも、捜査機関に「あのひと捕まえてください」と申告することができます。もちろんすべて捜査されることはありませんので、むやみに告発しないでくださいね。
最近、小保方晴子氏が兵庫県警に事情聴取されたということがありました。
http://mainichi.jp/articles/20160218/k00/00m/040/103000c
このニュースだと理化学研究所のOBの男性が「告発」したとされています。その犯罪事実は研究所からES細胞を持ち出されたというものです。すなわち犯人は不明だけど、窃盗の犯罪事実があるので捜査してほしいということです。ただしこのOBは直接研究所にかかわりはないので、第三者ということで「告発」ということになります。
3 被告人?被告?
マスコミの方に、声を大にして言いたいのは、「被告人」と「被告」を法律で使われている通りに使用してほしいことです。
「被告人」とは刑事訴訟法で、被疑者が起訴されて裁判にかけられたときに使用されます。
刑事事件では「被告人 VS 検察官」という対立構造です。
そして、「被告」とは民事訴訟法の「原告」の相手方です。民事事件は訴えを起こした方を原告、訴えられた方と被告といいます。「原告 VS 被告」という対立構造です。
「被告」は民事事件ですから、「お金返せ」「土地返せ」「損害賠償を請求します」というもので、罪を犯したわけではありません。裁判に負けたからといって、刑事罰を受けるわけではありません。
しかしながら、マスコミは刑事事件でも「被告人」のことを「被告」と使うので、一般市民の方が混乱して覚えてしまっています。
田中ひろし法律事務所でも、依頼者が民事事件の訴状を受け取って来所されますが、そこには依頼者の名前が被告の欄に書かれており、「自分は悪いことはやっていません」「警察につかまるのでしょうか?」「家族に迷惑がかかる」と相談を受けます。
あまりにもマスコミの「被告」という言葉がインパクトがあるので、自分が刑事罰を受けることになっていると感じておられます。弁護士事務所としては、その誤解を説明することから始めることになり、有料の法律相談だと本題にたどり着けないこともあります。
二文字か三文字かの違いですが、法律に書かれている言葉ですので、マスコミも法律に即して使用してほしいと切に願っています。
投稿者 弁護士法人田中ひろし法律事務所 | 記事URL
2016年2月19日 金曜日
改めて弁護士過疎偏在問題を考える 第5回
こんにちは!田中ひろし法律事務所です。
いよいよ弁護士過疎偏在問題の5回目、最終回です。
今回は問題の解決について提案したいと思っております。
第5回 地方の特殊性
<今回の内容>
1 自治体に司法試験合格者を
2 最後に
1 自治体にに司法試験合格者を
地方でトラブルに巻き込まれた場合に、弁護士に相談するという意識がない方が多いのも現状を前回説明いたしました。
「弁護士がいない→ほかの人に相談→弁護士のニーズがない→弁護士が事務所を開かない」という悪循環が地方にはあります。
地方自治体は、無料相談会等を開催し、弁護士と市民の接点を生み出す取り組みを行っています。自治体としても非弁行為を行う事件屋等に市民が相談しないように、啓蒙活動を行っています。
しかし、月2回程度では予約がすぐに埋まり、聞きたいときになかなか聞けないという現状だと思います。
そこで、自治体が司法試験合格者を採用し、公務員として勤務しながら、市民のトラブルの端緒に接することができれば、事件屋に相談しなくて済むではないかと予想します。
実際に、兵庫県の明石市では、司法試験合格者を積極的に採用しています。
http://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/201408/0007230520.shtml
記事では、
「新たに採用する4人のうち、3人は管理職として、障害者・高齢者福祉やいじめ問題、市民からの相談などに対応する。1人は係長としてDV(夫婦間の暴力)対応などに当たる予定。
任期は5年で、試験に合格すれば65歳まで更新できる。年間給与は7人で計約6600万円。
兵庫県内では、県に2人、姫路、伊丹市に各1人の弁護士職員が勤務している。」と書かれており、2012年から定着しているようです。
最近は、司法試験合格者が増え、多様な職務体系が増えており、弁護士資格を保有したまま自治体に勤務することも可能です。
市民にとって、出張所などに資格保有者がいれば、ちょっとした問題でも相談しやすいと思います。そして、そこから具体的に弁護士への引き渡しもできることになり、弁護士が身近になるように動いていくことになると考えます。
自治体としては、市民との窓口だけでなく、議会等で審議される条例の政策法務も対応できることができ、「自前で」リーガルチェックができるかと思います。顧問弁護士との打ち合わせもスムーズになると思います。
2 最後に
5回にわたり弁護士の過疎偏在の問題について、述べてきました。
数としては、この十年間で大きく変わったと思います。事務所としてもその変化のなかで事務所を運営してきましたが、これからより市民と接点をもって行くにはこれまで述べたような課題があります。
自治体との連携は解決するアイデアのひとつですが、弁護士会やほかの公設事務所等と連携して、いろんな連携や、市民へのアプローチ方法を変えて、この問題に取り組んで行きたいと考えてます。
いよいよ弁護士過疎偏在問題の5回目、最終回です。
今回は問題の解決について提案したいと思っております。
第5回 地方の特殊性
<今回の内容>
1 自治体に司法試験合格者を
2 最後に
1 自治体にに司法試験合格者を
地方でトラブルに巻き込まれた場合に、弁護士に相談するという意識がない方が多いのも現状を前回説明いたしました。
「弁護士がいない→ほかの人に相談→弁護士のニーズがない→弁護士が事務所を開かない」という悪循環が地方にはあります。
地方自治体は、無料相談会等を開催し、弁護士と市民の接点を生み出す取り組みを行っています。自治体としても非弁行為を行う事件屋等に市民が相談しないように、啓蒙活動を行っています。
しかし、月2回程度では予約がすぐに埋まり、聞きたいときになかなか聞けないという現状だと思います。
そこで、自治体が司法試験合格者を採用し、公務員として勤務しながら、市民のトラブルの端緒に接することができれば、事件屋に相談しなくて済むではないかと予想します。
実際に、兵庫県の明石市では、司法試験合格者を積極的に採用しています。
http://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/201408/0007230520.shtml
記事では、
「新たに採用する4人のうち、3人は管理職として、障害者・高齢者福祉やいじめ問題、市民からの相談などに対応する。1人は係長としてDV(夫婦間の暴力)対応などに当たる予定。
任期は5年で、試験に合格すれば65歳まで更新できる。年間給与は7人で計約6600万円。
兵庫県内では、県に2人、姫路、伊丹市に各1人の弁護士職員が勤務している。」と書かれており、2012年から定着しているようです。
最近は、司法試験合格者が増え、多様な職務体系が増えており、弁護士資格を保有したまま自治体に勤務することも可能です。
市民にとって、出張所などに資格保有者がいれば、ちょっとした問題でも相談しやすいと思います。そして、そこから具体的に弁護士への引き渡しもできることになり、弁護士が身近になるように動いていくことになると考えます。
自治体としては、市民との窓口だけでなく、議会等で審議される条例の政策法務も対応できることができ、「自前で」リーガルチェックができるかと思います。顧問弁護士との打ち合わせもスムーズになると思います。
2 最後に
5回にわたり弁護士の過疎偏在の問題について、述べてきました。
数としては、この十年間で大きく変わったと思います。事務所としてもその変化のなかで事務所を運営してきましたが、これからより市民と接点をもって行くにはこれまで述べたような課題があります。
自治体との連携は解決するアイデアのひとつですが、弁護士会やほかの公設事務所等と連携して、いろんな連携や、市民へのアプローチ方法を変えて、この問題に取り組んで行きたいと考えてます。
投稿者 弁護士法人田中ひろし法律事務所 | 記事URL
2016年2月14日 日曜日
改めて弁護士過疎偏在問題を考える 第4回
こんにちは!田中ひろし法律事務所です。
さて、今年は年明けから芸能人のニュースが取り上げられていますが、法律の条文上の文言とマスコミの用語が異なる言い方、言い回しがあります。
よく使われる「容疑者」というのはマスコミで使用される用語であり、刑事訴訟法上は「被疑者」です。特に新聞ではいまだに「容疑者」と書いていますが、(制度継続の賛否はともかく)裁判員制度で国民が条文に触れることを考えると、刑事訴訟法で使用される文言だけでも、新聞で使用したほうがいいと思います。言葉についても、今後ブログについて取り上げていきたいですね。
ということで、弁護士過疎偏在問題の4回目です。
第4回 地方の特殊性
<今回の内容>
1 弁護士が入りづらい
2 周囲の目
3 意識の差
1 弁護士が頼りにならない
弁護士が都心に集中し、なかなか地方に弁護士がいないという原因は、制度的な問題や経済性の問題があることは、想像できると思います。
しかし、根本的に地方の方がトラブルを抱えたときに、弁護士を頼らないケースが多いというのも伝統的な問題だと思っています。
田中ひろし法律事務所は、当初弁護士が少ない地域で事務所を開設しました。
そもそも弁護士に相談する選択肢が地域住民の方になかったのだと、感じることがありました。最近は、無料相談や弁護士会の支援等で、そのような地域の方も「弁護士に相談」という選択肢があるようになってきましたが、それでもやはり、弁護士以外のひとに相談するケースがあるようです。
では、誰に相談するのか?
その地域内でのトラブルは、その地域の有力者に相談するケースが多いようです。
例として、地域の年長者や区長さんなどに仲裁を求めるケースもありますが、いわゆる「事件屋」や政治家への口利きをお願いする場合があります。
弁護士が頼りにならない、という感覚が地方にはあるのかもしれません。
2 非弁行為
ちょっとしたトラブルの解決で、法律家以外の方に無償で相談にのったり、のってもらうことは問題になりませんが、前述の事件屋や政治家がらみは場合によって、双方法律違反になる場合があります。
地方だとちょっと繁華街に行けば知り合いに多く合うし、弁護士事務所に車をとめることもためらう方も多いです。誰がどんな車に乗っているか周囲に知られていますからね。
しかし、法律上のトラブル解決のために、弁護士以外に相談することはやめたほうがいいでしょう。弁護士でない者が報酬を得る目的で弁護士業務を反復継続の意思をもって行うことを非弁行為といい、非弁行為は法律で特別に許可されている場合を除き、一律に禁止されています。
これに違反して非弁行為を行った者は、2年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処せられます(弁護士法第77条)。
事件屋に相談し解決できたとしても、その相談した内容について弱みを握られ後でトラブルになるケースは珍しくありません。政治家への相談は、賄賂やあっせん利得になる場合もあります。刑事事件です。
3 意識の差
このように地方にはトラブルに巻き込まれた場合に、弁護士に相談するという意識がない方が多いのも現状です。
弁護士がいない→ほかの人に相談→弁護士のニーズがない→弁護士が事務所を開かない、という悪循環があるようにも思えます。
意識の問題は地方の特殊な問題なのかもしれませんが、私たちの事務所のように地方に事務所を開業することで、最初は苦労しましたが、上記の悪循環は少しずつ改善してきたように思えます。
弁護士のニーズが少しずつでてくることで、同時に制度的な問題や経済性の問題も解決することにもつながっているようにも思います。
このような感覚はデータ上にあらわれませんが、相談者の方からの対応で感じるところです。
弁護士過疎偏在問題(今後の予定)
第1回 これまでの日弁連の取り組み
第2回 医師が「少ない」、弁護士が「いない」
第3回 都心の過疎
第4回 地方の特殊性
第5回 自治体連携の可能性
さて、今年は年明けから芸能人のニュースが取り上げられていますが、法律の条文上の文言とマスコミの用語が異なる言い方、言い回しがあります。
よく使われる「容疑者」というのはマスコミで使用される用語であり、刑事訴訟法上は「被疑者」です。特に新聞ではいまだに「容疑者」と書いていますが、(制度継続の賛否はともかく)裁判員制度で国民が条文に触れることを考えると、刑事訴訟法で使用される文言だけでも、新聞で使用したほうがいいと思います。言葉についても、今後ブログについて取り上げていきたいですね。
ということで、弁護士過疎偏在問題の4回目です。
第4回 地方の特殊性
<今回の内容>
1 弁護士が入りづらい
2 周囲の目
3 意識の差
1 弁護士が頼りにならない
弁護士が都心に集中し、なかなか地方に弁護士がいないという原因は、制度的な問題や経済性の問題があることは、想像できると思います。
しかし、根本的に地方の方がトラブルを抱えたときに、弁護士を頼らないケースが多いというのも伝統的な問題だと思っています。
田中ひろし法律事務所は、当初弁護士が少ない地域で事務所を開設しました。
そもそも弁護士に相談する選択肢が地域住民の方になかったのだと、感じることがありました。最近は、無料相談や弁護士会の支援等で、そのような地域の方も「弁護士に相談」という選択肢があるようになってきましたが、それでもやはり、弁護士以外のひとに相談するケースがあるようです。
では、誰に相談するのか?
その地域内でのトラブルは、その地域の有力者に相談するケースが多いようです。
例として、地域の年長者や区長さんなどに仲裁を求めるケースもありますが、いわゆる「事件屋」や政治家への口利きをお願いする場合があります。
弁護士が頼りにならない、という感覚が地方にはあるのかもしれません。
2 非弁行為
ちょっとしたトラブルの解決で、法律家以外の方に無償で相談にのったり、のってもらうことは問題になりませんが、前述の事件屋や政治家がらみは場合によって、双方法律違反になる場合があります。
地方だとちょっと繁華街に行けば知り合いに多く合うし、弁護士事務所に車をとめることもためらう方も多いです。誰がどんな車に乗っているか周囲に知られていますからね。
しかし、法律上のトラブル解決のために、弁護士以外に相談することはやめたほうがいいでしょう。弁護士でない者が報酬を得る目的で弁護士業務を反復継続の意思をもって行うことを非弁行為といい、非弁行為は法律で特別に許可されている場合を除き、一律に禁止されています。
これに違反して非弁行為を行った者は、2年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処せられます(弁護士法第77条)。
事件屋に相談し解決できたとしても、その相談した内容について弱みを握られ後でトラブルになるケースは珍しくありません。政治家への相談は、賄賂やあっせん利得になる場合もあります。刑事事件です。
3 意識の差
このように地方にはトラブルに巻き込まれた場合に、弁護士に相談するという意識がない方が多いのも現状です。
弁護士がいない→ほかの人に相談→弁護士のニーズがない→弁護士が事務所を開かない、という悪循環があるようにも思えます。
意識の問題は地方の特殊な問題なのかもしれませんが、私たちの事務所のように地方に事務所を開業することで、最初は苦労しましたが、上記の悪循環は少しずつ改善してきたように思えます。
弁護士のニーズが少しずつでてくることで、同時に制度的な問題や経済性の問題も解決することにもつながっているようにも思います。
このような感覚はデータ上にあらわれませんが、相談者の方からの対応で感じるところです。
弁護士過疎偏在問題(今後の予定)
第1回 これまでの日弁連の取り組み
第2回 医師が「少ない」、弁護士が「いない」
第3回 都心の過疎
第4回 地方の特殊性
第5回 自治体連携の可能性
投稿者 弁護士法人田中ひろし法律事務所 | 記事URL
2016年2月 7日 日曜日
改めて弁護士過疎偏在問題を考える 第3回
こんにちは!田中ひろし法律事務所です。
さて、今週も弁護士の過疎偏在の問題について考えてみたいと思っております。
第3回 都心の過疎
<今回の内容>
1 都心特有の問題
2 選択肢が多すぎる
3 費用の問題
1 都心特有の問題
東京だけなく、九州であれば福岡市など都心は弁護士の数が多いです。
熊本県の弁護士は、250名を超えておりますが、福岡県の数は、1100名以上ということで、その差は4倍以上です。
人口比だと、熊本県は180万人で福岡県は500万人なので、熊本だと約7200人にひとりが弁護士で、福岡だと約4500人にひとりが弁護士ということになりますね。
ということは、福岡県は弁護士が多いので、「過疎」の問題はないとも言えます。
確かに、東京であれば、新宿や銀座などは弁護士が少なくて困るという問題はないと思います。弁護士の数は十分すぎるほど足りています。
福岡市でも天神あたりは弁護士事務所の看板は多く、東京の弁護士法人の支店もあります。
企業は都心にオフィスが多いので、企業法務は完全に飽和状態だと思います。いわゆる渉外事務所という言われるものですね。都心において企業法務は、よっぽと専門性がなければ、価格競争に陥るほど競争が激化しています。
では、その都心に住んでいる人はどれだけか?となると、やっぱり周辺から通勤通学しているひとが多いわけで、「弁護士の知り合い」というひとがいるのは都心でも少ないと思われます。
とすれば、TV広告やネット広告などの中から選択することになり、選ぶ作業は結構な負担になるのかと思います。その負担を感じて泣き寝入りする方もいると思います。弁護士へのアクセスは容易とは言えないと思います。
2 選択肢が多すぎる
結論から言いますと、都心の問題は選択肢が多すぎて、最悪の場合弁護士ではなく、知り合いに相談する、というケースがあるように思えます。また、広告のみを信用し、思ったような相談ができなかった、というケースもあるようです。
もちろん、弁護士が一人や二人の地域より、司法サービスへのアクセスという観点では、都心のほうがいいと思います。それを踏まえて問題点を探すと、「選択肢が多すぎる」という点は、市民の方に結構負担になっているのではないでしょうか?
例えば、交通事故の被害にあったときに、「弁護士特約がついていますよ」と保険会社から言われたとします。今だとネットで調べて、弁護士のリストがズラーっと検索結果が出ます。最近だと弁護士の口コミサイトをみるかもしれません。
その過剰な情報の中で、「裁判所に近いほうがいいかな」「初回相談無料」「駅に近い」「なんか有名そう」などの基準で検索しなおすかもしれません。でも、結局友人や知り合いに相談して、紹介のような形で事務所に相談することが多いように思えます。
交通事故であれば知り合いに相談できますが、人に知られたくないこと(弁護士に相談することは総じてプライバシーに関わる事項が多いです)の場合、知り合いを頼ることができず、いわゆる事件屋に相談してしまい、トラブルが余計にこじれることもあります。
都心に弁護士は多いですが、その多く市民の方々が弁護士に相談するところまでたどり着いていないかもしれません。
3 費用の問題
トラブルを抱えているのになかなか弁護士に相談できないのは、やはり費用が高額という問題があると思います。裁判費用はそれなりにかかりますし、そもそもトラブルでお金がない場合もあるのに、さらに出費をするのはためらいます。費用の問題はもちろん都心だけの問題ではないのですが、都心でも経済的に余裕のある方は少なく、選択肢が多い分かえって、問題を複雑化していると思います。
都心は、弁護士の数が多いのですが、弁護士しかできない示談の代理などを無資格で行う事件屋も多いです。費用が払えないとそのような事件屋に流れてしまう都心の方も多いと思われます。
弁護士の少ない地域に比べて、都心にも弁護士の「過疎」の問題があるように思えます。
弁護士過疎偏在問題(今後の予定)
第1回 これまでの日弁連の取り組み
第2回 医師が「少ない」、弁護士が「いない」
第3回 都心の過疎
第4回 地方の特殊性
第5回 自治体連携の可能性
さて、今週も弁護士の過疎偏在の問題について考えてみたいと思っております。
第3回 都心の過疎
<今回の内容>
1 都心特有の問題
2 選択肢が多すぎる
3 費用の問題
1 都心特有の問題
東京だけなく、九州であれば福岡市など都心は弁護士の数が多いです。
熊本県の弁護士は、250名を超えておりますが、福岡県の数は、1100名以上ということで、その差は4倍以上です。
人口比だと、熊本県は180万人で福岡県は500万人なので、熊本だと約7200人にひとりが弁護士で、福岡だと約4500人にひとりが弁護士ということになりますね。
ということは、福岡県は弁護士が多いので、「過疎」の問題はないとも言えます。
確かに、東京であれば、新宿や銀座などは弁護士が少なくて困るという問題はないと思います。弁護士の数は十分すぎるほど足りています。
福岡市でも天神あたりは弁護士事務所の看板は多く、東京の弁護士法人の支店もあります。
企業は都心にオフィスが多いので、企業法務は完全に飽和状態だと思います。いわゆる渉外事務所という言われるものですね。都心において企業法務は、よっぽと専門性がなければ、価格競争に陥るほど競争が激化しています。
では、その都心に住んでいる人はどれだけか?となると、やっぱり周辺から通勤通学しているひとが多いわけで、「弁護士の知り合い」というひとがいるのは都心でも少ないと思われます。
とすれば、TV広告やネット広告などの中から選択することになり、選ぶ作業は結構な負担になるのかと思います。その負担を感じて泣き寝入りする方もいると思います。弁護士へのアクセスは容易とは言えないと思います。
2 選択肢が多すぎる
結論から言いますと、都心の問題は選択肢が多すぎて、最悪の場合弁護士ではなく、知り合いに相談する、というケースがあるように思えます。また、広告のみを信用し、思ったような相談ができなかった、というケースもあるようです。
もちろん、弁護士が一人や二人の地域より、司法サービスへのアクセスという観点では、都心のほうがいいと思います。それを踏まえて問題点を探すと、「選択肢が多すぎる」という点は、市民の方に結構負担になっているのではないでしょうか?
例えば、交通事故の被害にあったときに、「弁護士特約がついていますよ」と保険会社から言われたとします。今だとネットで調べて、弁護士のリストがズラーっと検索結果が出ます。最近だと弁護士の口コミサイトをみるかもしれません。
その過剰な情報の中で、「裁判所に近いほうがいいかな」「初回相談無料」「駅に近い」「なんか有名そう」などの基準で検索しなおすかもしれません。でも、結局友人や知り合いに相談して、紹介のような形で事務所に相談することが多いように思えます。
交通事故であれば知り合いに相談できますが、人に知られたくないこと(弁護士に相談することは総じてプライバシーに関わる事項が多いです)の場合、知り合いを頼ることができず、いわゆる事件屋に相談してしまい、トラブルが余計にこじれることもあります。
都心に弁護士は多いですが、その多く市民の方々が弁護士に相談するところまでたどり着いていないかもしれません。
3 費用の問題
トラブルを抱えているのになかなか弁護士に相談できないのは、やはり費用が高額という問題があると思います。裁判費用はそれなりにかかりますし、そもそもトラブルでお金がない場合もあるのに、さらに出費をするのはためらいます。費用の問題はもちろん都心だけの問題ではないのですが、都心でも経済的に余裕のある方は少なく、選択肢が多い分かえって、問題を複雑化していると思います。
都心は、弁護士の数が多いのですが、弁護士しかできない示談の代理などを無資格で行う事件屋も多いです。費用が払えないとそのような事件屋に流れてしまう都心の方も多いと思われます。
弁護士の少ない地域に比べて、都心にも弁護士の「過疎」の問題があるように思えます。
弁護士過疎偏在問題(今後の予定)
第1回 これまでの日弁連の取り組み
第2回 医師が「少ない」、弁護士が「いない」
第3回 都心の過疎
第4回 地方の特殊性
第5回 自治体連携の可能性
投稿者 弁護士法人田中ひろし法律事務所 | 記事URL